阿弥陀堂だより('02)

 色合いや音楽の雰囲気、照明を見ていて、既視感があると思ったら、「雨あがる」や「博士の愛した数式」の監督だった小泉堯史氏の監督作品だったのね。映画のたたずまいというか、ゆったりとしたテンポが独特です。
 売れない作家(寺尾聡)、その妻でパニック障害の経験を持つ女性医師(樋口可南子)、村の死者をまつる阿弥陀堂に住む老婆(北林谷栄)、難病を持つ聾唖の少女(小西真奈美)、末期ガンを煩い死期を粛々と受け入れている元教師(田村高廣)など、どの人物も清々しく美しい。
 映画の中で北林谷栄が演じるおうめばあさんが、「小説はいい気分になるために読むもんじゃ。やーな気持ちになりたくて読む馬鹿はいねーですよ。」と言う台詞があるが、「小説」を「映画」に置き換えても通じます。たまには悪人がひとりも出てこない、こういう映画もイイものです。
 ただし、130分は長すぎる。信州の風景はたしかに美しいし、時折はさまれる映像にハッとする美しさは感じますが、舞台となった村に負けず劣らずの田舎ぐらしですから、山間の村の風景が延々と映されるのには途中で飽きてきました。映画館の大きなスクリーンで見ると圧巻のシーンなんでしょうが。
もう終わりなの? と驚くほど短かった「雨あがる」のように、100分以内に収めてあると、さらによし。

<余談> 樋口可南子がそりゃあもう美しい。この映画の撮影時は43〜44歳のはずだが、黒木瞳なんかよりもはるかに美しい。北林谷栄も樋口に負けじとも劣らず美しい。

阿弥陀堂だより [DVD]

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