放送禁止歌 / 寺尾紗穂（'10）

なるほど、同時に発売されたフルアルバムの『残照』は、この裏盤があって初めて完成するのか。実は『残照』に収められていたどの曲よりも、このマキシに収められている３曲の方に魅力を感じていたのです。

生活保護を受けている元ガテン系のおじいさんを歌った「アジアの汗」。『残照』に収められている”controlled version”では「おじいさんは○○さん*1」というふうに削られていた部分に、ちゃんと「ドカタさん」と歌われている。
そしてもう一曲の「家なき人」の方。ここで歌われている「家なき人」は、「アジアの汗」で登場しているおじいさんなのです。寺尾紗穂の視点のユニークさが歌詞に表れていますね。

歌詞も面白いのですが、この２曲のピアノのグルーヴィーさはなかなかのもの。この２曲と『残照』に入っている「骨壺」なんかを聞いていると、寺尾紗穂は今の日本のミュージシャンの中でも、孤高のポジションに到達しつつあるように思えてくる。

「放送禁止歌」

　

*1:○○の中は無音