野洲スタイル/ 山本啓司

 著者の山本啓司氏は滋賀県野洲高校のサッカー部監督。野洲高校は2006年の高校選手権で日本一に輝いたのだが、それ以前はほとんど無名の公立高校(しかも小規模校)。それを「選手経験ゼロの監督」が9年間で日本一に仕立て上げたのだから、驚きである。
 私はサッカーはルールもおぼつかないくらいの門外漢。サッカー云々というより、人材育成・部活動指導についてしるための教育書として読んでみた。「スポーツ」と「教育」を区別すべきであるという氏の論理は半分は納得できるのだが、最後まで違和感はとれなかった。それは高校と中学校という校種の違いが大きいと思う。中学校にはスポーツ少年団・スポーツクラブでの活動も経験したことのない生徒が、ルールも知らずに入部してくる。それも希望を持って、親からも後押しされて。中には運動能力にやや劣る子も入ってくるが、高いレベルのチームになればなるほど、選手としては淘汰されていく。かといって、簡単に辞めさせることは難しい。それは中学校の部活動が選手育成だけではなく、教育、とりわけ生活指導の役割も担っているからである。
 氏の言うように「スポーツ」と「教育」を区別できるようにするためには、地域全体が重層的なスポーツクラブの体制がとられていることが必要だろう(著書の中にもそう書かれている)。中学校の部活動も教師が指導するのではなく、地域の中で育成できるようになると、中学校教員の負担は大きく減るだろう。実際にそれを推し進めようとする動きは、少しずつ見られるのだが・・・。そのためのコスト増や地域の人材育成の問題があり、そう簡単な話ではない。中学校の教員が指導者を務めるという部活動は、国や自治体にとっても、家庭にとっても、非常に低い負担で済んでいると思うのだが。

野洲スタイル

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