岐阜市本荘小学校学習活動参観

この本荘小学校は文科省の「先導的教育情報化推進プログラム」調査研究校であり、パナソニック教育財団実践研究助成の特別研究指定校でもある。

  • 「学習活動」

通常は公開「授業」参観なのだろうが、井上志朗校長のこだわりで「学習活動」参観なのである。単なる言葉の違いではない。教師の“授ける”行動に軸足を置いた「授業」ではなく、児童の学びに軸足を置いた「学習活動」なのだ。実際に参観したどの授業でも「学習活動」が展開されていた。どの授業でもそうではないのだろうが、この日の授業では教師の「指示」、「説明」が少なく、子どもたちの学び合いが多かった。

  • 学びの連続 

家庭で教科書をもとに自主学習をする → 学校で教科書をもとに、ICTを活用して、教師や級友と一緒に学び合う → iプリと呼ばれるドリルプリントを家庭で学習し、学習の補充や発展を行う
この過程が「学びの連続」なのである。児童が家庭で“自主”学習をすることが前提である。子どもたちの中から生まれてくる“自主”学習ではないと、この自主学習を批判する人は多い。家庭で事前に“自主”学習(予習)をすることで、授業がわかる。わかるとうれしいから自主学習をする。本当の意味での「自主」学習になってくるのだろう。
このあたりはボランティア学習と同じで、入り口は教師が用意してボランティア体験を“させる”のだ。一度入り口から入った子どもたちがさらに奥に進むか、進まないかは、それこそ、自主性に任せるのだ。教師や親の仕事は、とりあえず「入り口を用意すること」なのだ。

  • 教科書の活用・ICTの活用

 教科書は最も重要なコンテンツであるということは、以前から私も実感していたこと。本荘小のポイントは「教科書は子どもたちが自主学習をできるように編集されている」ととらえているところだ。授業でもプロジェクタでスクリーンに映されているのは、ほとんど教科書のみ。教科書をデジタル化してサーバーに格納しているのだ。だから、教室で活用されているのはプロジェクタ+PCの組み合わせである。このあたりは、実物投影機の活用を重視している私にしてみれば異論があるところだが、パナソニック財団の150万円の助成で導入していくのかもしれない。

  • 学校組織のネットワーク化

この学校では校長以下、教頭・教務主任などで構成される企画部と担任で構成される運営部との二つがある。担任は子どもたちに向き合って学級経営に専念する。それに対して企画部は行事の企画など、校務を担当する。それぞれが仕事の棲み分けをすることで、精神的なゆとりと時間的なゆとりを生み出すという工夫だ。やり手の校長の学校では、下にいる者たちがたいへんになるというイメージがあるが、こういう工夫があるからこそ、無理なく進めていけるのだろう。実際にこの研究発表では研究紀要は一切ない。教師に分担して分厚い研究紀要を作るかわりに、井上校長が今まで書いてきたブログをもとに作られた書籍が入っているのである。こうして、担任は授業と学級経営に専念できるようになっているのだ。
井上校長のリーダーシップで大きく変わった本荘小学校。今から来年の2年目の発表が楽しみである。しかも、井上校長が今年度でご勇退だとなると、その後の本荘小がどう変わっていくのか、ということも含めて。