塩の道 / 宮本常一

 民俗学の巨人である宮本常一の晩年の3本の講義をまとめたもの。語り口が平明で、一度読み始めるとページをめくる手が止まらないほど、興味深い内容である。
「塩の道」は塩の製造方法から、海でとれる塩がどのようにして山間部に運ばれいったのかをていねいになぞっていく。
「暮らしの形と美」では、日本における農耕の発達や、南方から渡ってきた人びとが高床式の住居を移入したことから、寒い日本で寒さをしのぐための蔀戸やふすま、障子戸などを必要としたこと、畳をしくことが日本人の性格までも形成していったこととなどを、いきいきとした口調で説いている。
 この読後感は何かに似ていると思ったら、やはり歴史学の巨人、網野善彦の著作(論文ではなく)を読んだ時と似ている。宮本常一氏の次の著作を探してみることにする。

塩の道 (講談社学術文庫)

塩の道 (講談社学術文庫)