砂漠の流れ者(’70)  ★★★★★

 サム・ペキンパー監督作品。となると、死人がばんばん出る、血なまぐさいバイオレンス映画と思っちゃうけど、これは真逆の純愛ものとも言えるし、 コメディ映画とさえも言える物語。開拓時代も終わろうとしている(映画のラスト近くで自動車が登場する)西部を舞台にしたおとぎ話のようなものと考えればよいかも。ペキンパー映画につきものの銃撃戦でのスローモーションは登場せずに、逆に早回しを使ってコメディタッチの演出が多用されている。
 主人公のケーブル・ホーグ(ジェイソン・ロバーズ)も人間味が溢れたいい男だし、彼と恋に落ちるヒルディ(ステラ・スティーヴンス)は決して美人じゃないのに、かわいげがあるいい女だし。気のいい駅馬車の御者や簡単に融資してくれる銀行の頭取など登場人物がみんないい人ばかり。
サム・ペキンパーは自分の映画の中では、この作品が一番気に入っているとのこと。なんとなくわかる気もする。