Music / Carole King (1971)
−「私は素晴らしいシンガーではないから,曲そのもので聴き手の心をつかまなければならないの」−
ODE時代の代表曲を集めたボックス・セットである『私花集』についているブックレットには,彼女のこんな言葉が載せられている。
Laura Nyloはこんな風に言っている。
「彼女のソングライター・ヴォイスが好き。誰にも媚びようとしない誠実な歌声が好きなの。」
なるほど,同じように生硬い声質を持つL.Nyloが言うと説得力がある(おそらくJoni Mitchellも同様のソングライター・ヴォイスの持ち主だろう)。たしかに彼女の声はお世辞にも美声とは言い難い。テクニック的な面での巧さはなくても,キャロルの温かく誠実な声は,そのメロディと相まって私たちの心の中に染みわたってくるのだ。
『Tapestry』が爆発的に売れている余韻が残る中にリリースされたソロ3作目。
「『Tapestry』のシンプルな音づくりを超えなくてはならないから,ホーン・セクションを入れたんだ。」
とプロデューサーのLou Adlerは言っている。
『Tapestry』が彼女のうちにあるものを素直にはき出した作品集だとすると,この『Music』はサウンド面や歌詞の面でもうワンランク上を目指そうとしているのがよくわかる。ホーン・セクションの導入は,タイトル曲などに流れるジャズのフィーリングを生み出しているし,Marvin Gayeに触発されたと思われる「Brother, Brother」のようなニュー・ソウルへの接近は,2年後の『Fantasy』で開花する。
ピアノの前に座り正面を見据えているキャロルの顔は,柔和でありながら,「私の音楽を聴いて」と言わんばかりに自信にあふれているようだ。
Music is playing inside my head
over and over and over again
My friend, there's no end to the music 「Music」