Do Right Man / Dan Penn (1994)

howdymoon2005-11-16



黒人音楽に憧れて真似しようとした白人,いわゆるブルーアイド・ソウルのミュージシャンは数多いのだが,黒人音楽を作る側にまでなってしまったのが,このダン・ペン。これは彼の20年ぶりのセカンド・アルバム。前作は言わずと知れたスワンプの名盤の『Nobody's Fool』('73年)だが,うれしいことにジャケットには『Nobody's Fool』にも使われている古い車が使われている。


音の方はと言うと,「The Dark End Of The Street」(James Carr),「It Tears Me Up」(Percy Sledge),「You Left The water Running」Wilson Pickett),「Zero Willpower」(※Irma Thomas),「I'm Your Puppet」(James & Bobby Purify)といった彼が手がけた名曲を作者自身が歌っている。タイトルにもなっている「Do Right Woman Do Right Man」はもちろんだ。
 

この「Do Right Man.....」に関して少しだけ・・・。ジェリー・ウェクスラー(アトランティックの副社長)によってフェイム・スタジオに送り込まれたアレサ・フランクリン「I Never Loved A Man(The Way I Love You)」を録音した後。ペンはチップス・モーマンと共作した「Do Right Man.....」を吹き込もうとして譜面を渡したのだが,彼女は譜面どおりに音が取れずに録音が進まなかった。そこでダン・ペンが手本に歌ったのだが,そのバージョンをもとにニューヨークで録り直したのが,現在聴くことが出来るあの名唱だとのこと。その曲を二十数年後にこうやって歌い直しているのが,このアルバムに収められているのだ。出来が悪いわけがないのがわかってもらえるだろうか。
 

訥々と歌うペン,それを支えているのはかつてのマッスル・ショールズの仲間たち=レジー・ヤング(g),ジミー・ジョンソン(g),スプーナー・オールダム(organ),ロジャー・ホーキンス(Dr),ウェイン・ジャクソン(Tp),ルブラン&カーのレニー・ルブランやデルバート・マクリントン(harmonica)なんて名前も見える。リラックスしたムードの中,これが'90年代の音楽かと思えるようなレイドバックした雰囲気が伝わってくる。



※彼女はダン・ペンの曲だけを集めた『My Heart's in Memphis: The Songs of Dan Penn』というアルバムまで出している。