fo:rest / Ann Sally ('11)

howdymoon2011-03-15


週末に届いたアルバム。
この週末は音楽そのものを聞く気にはなれなかったのですが、このざわざわした気持ちの中で彼女の声ならば聴きたいと思えるものでした。

前作の『こころうた』がとても気に入っていたので、
この3年間新作を待ちわびていたのですが、
本作からはコンサート会場での販売と
ホームページからの通販のみという展開になってしまったのですね。


内容はやはり待った甲斐があるものでした。
彼女のやわらかな歌声も堪能できますし、
その歌声にマッチするオーガニックなサウンドもとても素敵。
主張しすぎるのではなく、温かく透明感のある彼女の歌声を
大切に包み込むような演奏です。
特に飯田玄彦のフリューゲル・ホルンやトランペットがいい。
(後で知りましたが、彼女のご主人だとのこと)。


アルバムの大半はカバー曲。
『Voyage』、『moon dance』、『day dream』というカバー曲だけで構成されたアルバムが好きでしたから、
このアルバムのカバー曲も選曲といい、解釈の仕方といい、
さすがはアン・サリーという内容。
松田聖子のというより細野晴臣ガラスの林檎
Wendy Waldmanの「Wild Bird」
Joni Mitchell「Help Me」、Linda Lewisの「Lark」
Carole KingSnow Queenという有名な曲の中に、
久保田麻琴と夕焼け楽団「星くず」
Joao GilbertoやCarlos Lyraの演奏で知られる
Vinicius de MoraesのVoce e Euが混じっています。


この中ではガラスの林檎が出色の出来。
ていねいに歌詞を歌っているので、耳を澄ましていくと、
なんとセンチメンタルな乙女な曲なのだと感じ入りました。
特に「聞こえないふりしている あなたの指を噛んだ」っていう部分。
加えて「Lark」のしっとりとしたヴォーカル、
サクサクした乾いた音が心地よいVoce e Euもなかなかのできです。


これらのカバー曲もいいのですが、
それでも日本語で歌われる彼女のオリジナル曲の方に軍配が上がります。
童謡のような「雨のち晴れ」はピアノとウーリツァーの響きが印象的。
アルバムのジャケットのように希望に満ちあふれた「あたらしい朝」は、
そのやわらかな響きと前向きな歌詞に、幸せな気持ちになります。


アルバムのタイトルは「森」でもあり、
「やすらぎのために」=“for rest”でもあるようです。
わたしたちの国に「あたらしい朝」が来ることを願っています。