続・人間万葉歌 阿久悠作詞集 ('08)
阿久悠が作詞した曲を集めたコンピレーションの第2弾。第1弾は昭和歌謡史を代表する大ヒット曲を収録していましたが、この第2弾は知られざる佳曲(といっても半分以上はヒット曲ですが)を集めたもの。アマゾンのマーケット・プレイスで1200円という価格でしたので、購入しちゃいました。
5枚組で107曲もありますが、狙いはもちろんカバー曲を集めた第5盤です。
目玉はキリンジが歌う「もしもピアノが弾けたなら」。キリンジがカバーするちょっと前に、たまたまテレビで西田敏行が歌っているのを聴いて、この曲の歌詞の切なさ、メロディの温かさが心にしみていたのです。キリンジは小細工は一切なし。カラオケで歌うかのごとく、アレンジも歌唱(弟の方)もシンプル。さすがはキリンジ。ツボは外しませんね。
もう一つの目玉は寺尾紗穂の「青春時代」。ピアノとチェロだけで切々と歌うと、この曲の歌詞はまた違ったものに聞こえてきます。
クレイジーケンバンドの「あの鐘を鳴らすのはあなた」は、これが初のCD化だそう。もともと昭和歌謡のテイストが濃いCKBですから、この名曲はぴったりはまります。ただ、CKBなら、もっとハチャメチャにデフォルメしたものも期待したいところですが・・・。
ウクレレ(3本?)だけでカバーしたつじあやのの「渚のシンドバッド」は、ピンクレディーが持っていた下世話さを感じさせない素晴らしいカバーになってます。
森進一の稀代の名曲をパンキッシュにカバーした近田春夫とハルヲフォンの「東京物語」は、有名な『電撃的東京』から。昔、近田春夫のオールナイト・ニッポンを聴いていた中学生の頃を思い出します。歌謡曲をちゃんと音楽的に評価していたのが近田春夫さんでしたからね。
驚きだったのはデューク・エイセスの「恋のダイヤル6700」。ジャジーなアレンジの上に、スタイリッシュなコーラスが乗るという妙味は流石とうなずかざるを得ない仕上がり。
他にもそれぞれが味のあるカバーになっています。大橋純子の「たそがれマイ・ラブ」をボッサなA.O.R.に仕立てている稲垣潤一、意外とよかったすぎもとまさとの「転がる石」、森田健作の「さらば涙と言おう」をダンスホール・レゲエに仕立てたU-DOU & PLATY feat.アルベルト城間、ブラジルとコリアンと演歌が混然一体となった、渚ようこの「舟唄」、中島みゆきは日吉ミミに提供した「世迷い言」をセルフカバー、石野真子は名曲「失恋記念日」を30年ぶりにセルフカバーしてます。
残りの4枚も簡単に。
第1集は、新沼謙治の「おもいで岬」、森進一の「故郷」のちょっとバタ臭い演歌が聴きもの。それに、レゲエのビートを取り入れた坂本冬美の「蛍の提灯」は珍品。
第2集は岩崎宏美の初期シングル曲の破壊力に降参。「二重唱」、「私たち」、「センチメンタル」、「ファンタジー」の4曲で、いずれも筒美京平先生の作曲・編曲(「二重唱」の編曲は萩田光男)。この時期の京平先生は、フィリー・ソウルやヴァン・マッコイあたりを意識したディスコ歌謡路線のヒット曲を生み出していました。私にとってのディスコ歌謡のトップは松崎しげるの「銀河特急」ですが、岩崎宏美の「センチメンタル」、「ファンタジー」もそれに負けず劣らずの素晴らしさ。フィリーといっても、トム・ベルやギャンブル&ハフの世界というよりも、もっと下世話な(←ホメ言葉)ヴァン・マッコイの世界観。その流麗なサウンドの上に、フェロモンがゼロの岩崎宏美の青臭い歌声が乗っかっていくというアンビバレンツな魅力にくらくらします。2ndシングル「ロマンス」のB面だった「私たち」も素晴らしい曲。
第2集は他にも、桜田淳子の「はじめての出来事」、「十七の夏」というザ・歌謡曲もなかなかいいものでした。
第3集はこの頃突然TVに露出しだしたCharと停滞期に入っていた西城秀樹。Charの「逆光線」と「闘牛士」。メロディはポップなのに、間奏のギターはゴツゴツシタロックで、もっとギターを聴きたくなりますね。どちらもイントロがカッコいいのです。西城秀樹の方の「若き獅子たち」は大風呂敷なメロディがニール・ダイヤモンドを思わせますが、なんだか聴き続けてしまう魅力があります。
第4週は萩原健一のソロデビュー作「ブルージンの子守歌」(作曲は加藤和彦)と堺正章の「幸福への招待」(作曲は筒美京平先生)が楽しめました。
このCDを聴いたのがきっかけで、You Tubeで「夜のヒットスタジオ」のオープニング・シーン(次の人の持ち歌をカバーしてリレーしていくアレ)をいくつも見ちゃいました。
- アーティスト: オムニバス
- 出版社/メーカー: Vicctor Entertainment =music=
- 発売日: 2008/09/27
- メディア: CD
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