It Ain’t Exactly Entertainment Demo & Other Sessions / Gerry Goffin (’73)

howdymoon2010-11-20

 
 今年になってBIG PINKからリリースされたアルバム。スワンプの名盤として名高い『It Ain’t Exactly Entertainment』のデモや未発表音源を集めたもの。’50年代からキャロル・キングと組んで、数々のポップスをヒットさせていた彼。タイトルは「このアルバムはエンターテインメント(=ポップス)じゃないよ」という宣言ですね。
 デモ音源ということに加えて、(おそらく)盤おこしでしょうから、音質は良くありませんが、それでも余りある瑞々しい音楽。オリジナルの『It Ain’t…』も数年前にCD化されたようですが、今や廃盤で5ケタの値段がついているようです。
 デモ音源といいながら、オリジナルとダブっているのは3曲だけのようで、8曲は未発表。この未発表曲の方はそれなりに「エンターテインメント」=ポップス寄りの曲が並んでます。「I’m Calling」や「Lady Night」なんて、派手さは無いけど、ポップスとしては一級品の曲。もう少し録音状態の良いものを聴いてみたいモノです。「Ludella」はヴァン・モリソンに歌わせてみたいような渋めのロッカバラード、「Baby, I'm Afraid You Lost It」は女性Vo.が歌うバラード(キャロル・キングとも言われているけど、違うんじゃないかなぁ…)。
スワンプ・タイプの曲も紹介すると、1曲目の「Don’t Wait Too Long」はボブ・ディランin マッスルショールズ風のアーシーな曲。「What Am I Doing Here」や「Down On The Street」はギターの音色も女性コーラスも、ジェリーのヴォーカルも正真正銘のスワンプ。オリジナルにも収録されている「It’s Not The Spotlight」のセルフカバーも、ロッドのバージョンよりもいいですね。気になって歌詞を調べてみたら、これがまたいいのですよ。ジェリー・ゴフィンの歌唱も、静かにだけど熱が入っています。
 本籍地がソウルミュージック界隈である私からすると、注目すべきなのは、グラディス・ナイト&ザ・ピップスに提供した「I've Got To Use My Imagination」をセルフ・カバーしているところ。グラディスのバージョンよりも、ややテンポを落として黒っぽく歌ってます。マッスルショールズ録音ですから、この印象的なギターのフレーズはエディ・ヒントンですかね。
 シェールの『4614 Jackson Highway』が好きな人は、このアルバムも気に入るはず。オリジナルの『It Ain’t Exactly Entertainment』も欲しくなりました。もう一度再発してもらえないモノですかねぇ。

イット・エイント・イグザクトリー・エンターテインメント・デモ&アザー・セッション(紙ジャケットLimited Edition)

イット・エイント・イグザクトリー・エンターテインメント・デモ&アザー・セッション(紙ジャケットLimited Edition)